実録不動産トラブル#14 登記の真実性の確認方法3〜前所有者への聴取は難しい〜
「登記の真実性」の確認方法としての「前所有者への聴取」(売主の前の所有者に直接話を聞く―「危険6」)には問題がある。そもそも売主は、買主(側)が前所有者に直接接触する事を嫌う事が多いのである。
◆疑われるのを嫌がる
売主(現所有者)にやましい(登記の真実性が否定される、あるいは何らかの問題を孕む)ところがなければ前所有者への聴取を嫌がられる事はない様に思われがちだが事はそう単純ではない。
先ず大半の売主は「真っ当な」売主であり、売買も殆どが「真正な売買」である。それを「保有期間が短いから」という理由で疑ってかかる訳である(疑うにはそれなりの理由があるのだが)。
疑われていると思えばいい気持ちがしないのは当然である。
◆蒸し返しを嫌がる
例えば次の様な事情があった場合である。
・土地を不動産業者が買って自社で建物を建てて分譲する予定だったが事情が変わりそのまま転売する事になった。
・転売する事を売主には隠していた。
・マンションを買い取りリフォームした上で転売する事を売主には伝えてあったが、あまりその点に触れて欲しくない(転売価格などを気にするであろうから)。
・売買交渉の過程で色々ともめていた(売買価格、明渡条件、境界、越境物その他)ので、蒸し返されるのは嫌だ。
・任意売却等売主が喜んで売るのでない時は購入後に前所有者との無用な接触を嫌うのは当然と言えば当然(そもそも不動産の売主は必ずしも喜んで売却するケースばかりとは限らない)。
◆嫌がられると余計疑わしくなる
情報開示や前所有者との接触を嫌がられると何も問題のない「まっとうな」売主であっても怪しく感じられるものだ。そこが難しいところだ。
この様に前所有者への聴取(疑わしさを明確に否定する資料・情報への直接的なアクセス)ができない場合(実際はその例が多い)にはどうすれば良いか。
◆前所有者への聴取に代わる方法
間接的な情報を積み重ねる。情報としては契約書等の書面(コピー)の入手、関係者からの聴取等が考えられる。
聴取対象は「危険5」で書いた「関係者」のうち前所有者以外の方達(売主自身、仲介業者、司法書士、測量士、金融機関等々)。
取得すべき情報は、取引に至る経緯、売却の動機・目的、取引の内容、前所有者と売主との関係、前所有者、売主、仲介業者等の属性、評判、信用度等の情報、等々。
この様な間接的な情報を収集する事により、登記の真実性についての確信が得られる瞬間が訪れるはずである。
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