実録不動産トラブル#12 自分の不動産が知らない間に他人の名義に!〜不動産オーナーも詐欺の被害に!〜
◆オーナーの立場から
先日ある方から、「自分の不動産が知らない間に名義が変わっていて今訴訟になっている」という話を聞いた。これまでは主に不動産を買う側の立場から、事故に会わずに安全に不動産を買うにはどうすれば良いかという提言を行って来た。今月は見方を変えて不動産オーナーの立場から、自分の不動産が事件・事故に巻き込まれる(「地面師」=不動産詐欺=の被害に会う)可能性についてお話したいと思う。
◆名義を勝手に変える手法
自分の不動産の名義が知らない内に他人の名義になる、とは具体的には例えばこういう事である。
Aが所有する甲不動産について、詐欺師XがAになりすまし、権利書や印鑑証明書、運転免許証を偽造して不動産を善意の第三者であるBに売却してしまった様な場合である。Bや仲介業者はもちろん、司法書士や法務局も偽造や替え玉を見抜けなかった場合には所有権移転登記も一応形式的には有効に行われてしまい、名義(登記簿上の所有者)はAからBに変わってしまう。
◆被害の内容
もちろんこの場合Xは無権利者であるからX−B間の売買契約もA→Bへの所有権移転(及び登記) も無効である(登記を信じたものは善意でも救われない=登記に公信力がない)。従ってAは依然とし て所有者である事には変わりがない。
しかし、B名義の登記を放置しておくわけにはいかないから、Aは自分の名義を回復する必要があり、通常は(Bに頼んでも抹消に応じてもらえるとは考えにくいから)Bを相手に所有権移転登記の抹消請求訴訟を提起する事になる(Aは真実の所有者であるから通常は訴訟には勝てる)。
もちろん所有権を失うという損害はないが、訴訟には手間も費用もかかるし、自分の不動産を材料に詐欺が行われ、善意の第三者が莫大な金銭をだまし取られるというのは気持ちの良い話ではない。
◆所有権を失ってしまう場合
また、Aが所有権を失う(Bが保護される)可能性も全くない訳ではない。Aにも落度がある場合が一例である。例えば名義がAからBに変わっているのをAが知っていながら放置しており、Bが善意のCに当該不動産を売却した場合や、Aが自分の実印・印鑑カード・権利書を他人に預けていて、その他人が勝手に不動産を売却してしまった場合等である。
また、落度はなくてもBが善意で10年間不動産を占有していた場合Bが時効取得する事ができ、Aは所有権を失う(この場合は登記名義が変わっていなくても同じ)。
◆被害に会わないために
詐欺師によって知らぬ間に不動産を勝手に売却されてしまうというのは防ぎようがない。しかし、少なくとも所有権を失ったり、過失責任を追及される様な事にならないためには、物件自体の管理、実印や印鑑カードの管理をしっかりと行う事が必要である。そういう意味でも不動産を空き家のまま放置しておく様な事は避けるべきだ。詐欺師に狙われやすい不動産についてはFukuda Legal News vol.1 「不動産詐欺事件はここに気を付けろ!」を参照の事。
▼関連記事一覧