実録不動産トラブル#4 危険なのは売買だけでなく相続も!
Vol.2で、「『買い取ってから』転売するまでの保有期間が短いものは保有期間が長いものに比べて危険が潜む可能性が高い」として、「買取」が真正に行われていない場合の例を7パターン上げた。
しかし、保有期間の長短は所有権の取得原因には直接関係がない。危険があるのは売買の場合だけではないのである。
例えば相続。実は相続こそ売買以外で問題になる典型的な所有権取得原因なのである。
つまり、登記簿上「相続」を原因として所有権取得(移転)登記がされていても、その相続が真正に行われておらず、登記が無効となるあるいはトラブルの種を抱えているという事が少なからずあるという事である。
では、相続が真正に行われていない場合とはどんな場合だろうか。
1 遺産分割協議の仮装
遺産分割協議は相続人全員によって行われるものであるが、一部の相続人が自己に有利な内容の分割協議を仮装(遺産分割協議書を偽造)し、それに基づいて相続登記が行われている場合
2 遺言の仮装
一部の相続人または第三者が自己に有利な内容の遺言を仮装(遺言書を偽造)し、それに基づいて相続(遺贈)の登記が行われている場合
3 遺産分割協議の無効・取消
遺産分割協議参加者に高齢や疾患による精神障害があり意思能力がない場合
遺産分割協議が詐欺や脅迫による意思表示に基づいて行われた場合
4 遺言の無効・取消
遺言者に高齢や疾患による精神障害があり意思能力がない場合
5 遺留分の侵害
遺留分を侵害する内容の相続・遺贈であっても減殺請求がされない限り有効であるし、相続人(受遺者)が売却してしまえば善意の転得者まで追及される事はないが、トラブルの種を孕んでいること自体が問題である。
これらの危険性はもしこの様な事実があった場合相続または遺贈自体が遡って効力を失う可能性がある(登記が無効となる)ということである。
もちろん、訴訟となっても最終取得者が保護される(勝訴する)可能性がある事、しかし裁判で勝てるから「危険」がないというものではない事、「危険がある」とは訴訟を提起されること自体(仮処分や仮差押え等をされる可能性もある)、あるいは何らかの金銭的な要求やクレームになる可能性があるということだというのは「売買」を原因とする場合と全く同じである。
ではこの様な危険を回避するためにはどうすればよいか? それはまた次号以下で!
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