実録不動産トラブル#6 登記の真実性の確認方法2 最も確実な証拠は?
前号まで、登記は信じてはいけない、信じるべきは登記の裏にある実体関係である、その実体関係の確認は司法書士が行うべきである、そして「確認」とは「登記が真実であるとの確信を得られる事」であり、その確信を得るための根拠となる資料(事実関係を推認できるだけの材料、訴訟で言えば「証拠」)としては、権利(所有権)取得の経緯が記載されている書面や関係者(売主、前所有者、仲介業者、司法書士、測量士、金融機関等々)からの聴取等があると述べた。では登記の真実性を裏付ける最も確実な「証拠」はどんなものだろうか。
【最も確実な「証拠」の例】
登記の真実性について最も確実(確信を容易に抱く事が出来る)つまり「証明」力の高い「証拠」には次の様なものがある。
1. 前所有者の証言 今の所有者=現所有権登記名義人に不動産を売渡した者、贈与した者等が、「間違いなく現登記名義人に売却、贈与、交換等で不動産を譲渡した」旨の「証言」。
2. 当該不動産を相続しなかった相続人の証言 遺産分割協議、遺言等により当該不動産を取得しなかった者が、「協議書・遺言の存在を認識しその有効性を承認し、自分が相続しない事を承認している」旨の「証言」。
【「証拠」取得の困難さ】
これらの「証言」を直接聴取する事ができれば、登記が真実である事についての確信を容易に持つ事ができるのは言うまでもないが、それは容易ではない。次の様な理由からである。
1. これら対象者が当該取引(売買)の当事者ではない。 従って直接連絡する理由がない。そもそも連絡先を知らないのが通常である。仮に連絡先を知っていたとしても、いきなり連絡をすれば警戒されるだけである。不動産取引で買主側が前所有者に直接接触してくる事は今のところ(私はそうなって欲しいが)一般的な事ではないからである。また同じ理由で売主(現所有者)の頭越しに前所有者に連絡する事で売主に不快感を抱かせることも少なくない。断りもなく連絡をする訳には行かない。
2. これら対象者と売主との関係が良好でない事も少なくない。 特に相続の場合。なかんずく遺言は、被相続人と相続人の一部(対象者)との関係が良好でないからこそ行われるのである。
売主(現所有者)にやましいところがなければ嫌がられる事はないのではないかと言われそうだが事はそう単純ではない。(次号に続く)
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