実録不動産トラブル#5 登記の真実性の確認方法1
これまで、Fukuda Legal News では、「登記を信じてはいけない」と強調して来た(2012 vol.3他)。では何を信じれば良いのか。
それは、登記の裏にある「実体関係」である。実体関係に何の問題もない事が確認できなければその不動産の取引に踏み切ってはならない。この実体関係(売買・相続他による不動産の取得)に何の問題もない時に初めて登記は「真実性」を帯びる。
【登記の真実性の確認は誰が行うべきか?】
私は司法書士の存在意義は(決まった取引の結果を受けて登記の手続きを忠実に行う事ではなく)不動産取引自体を安全に成立させるところにあると考えている。即ち、この考えの下では登記の真実性の確認も当然司法書士の職責であるという結論になる。
【「確認」とは何か】
これに関しては法令に明確な規定がある訳ではない。そもそも「登記の真実性」の確認を義務付ける法令などない。むしろ法令・制度の不備を補うために私達が作り上げてきた方策であるから、その基準も私達が独自に設定しなければならない。
端的に言えば「確認」とは「登記が真実であるとの確信を得られる事」であると言って良い。その方法の如何は問わない。取引の経緯、当事者の信頼度その他の事情を総合的に勘案し、経験と、場合によっては「勘」に照らし合わせて、登記が真実であるという「確信」が得られれば良いのである。
【「確認」をする者の能力・経験】
もちろんある者が抱いた「確信」が客観的に信頼できるものとして採用されるためには、その者には一定程度以上の知識・経験・能力が備わっている事が必要であり、誰にでも信頼するに足る判断が出来るというものではない。これはあたかも現代の訴訟における大原則である「自由心証主義」(証拠方法や経験則の採用を裁判官の自由な選択に任せる建前)が、裁判官の高度な識見に対する信頼を前提にしている事と似ている(大袈裟でなく)。
【どの様な「証拠」を集めれば「確信」が得られるのか】
証明力(証明対象とされた事実の認定に実際に役立つ程度)が高いものが望ましい事は言うまでもないが、その収集のしやすさも重要なポイントとなる。具体的には次の様なものが考えられる
権利(所有権)取得の経緯が記載されている書面。例えば契約書(売買、贈与、交換その他)、遺言書、遺産分割協議書。関係者(売主、前所有者、仲介業者、司法書士、測量士、金融機関等々)からの聴取。次号以下で詳しく検討しよう
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