増資・新株予約権

増資(募集株式の発行)

債務の株式化(DES)とは?

債務の株式化(DES)とは、借入金(デットDebt)と資本(エクイティEquity)を交換(スワップSwap)することをいいます。
債務者である企業が、借入金を返済しなくてもよいかわりに債権者に株式を発行するという方法です。
よく利用される場合のひとつに、社長や役員等が会社に対して有する貸付金を会社に現物出資させ、会社がその出資者に株式を発行することによって、会社の負債を減らし資本金を増加させるというものがあります。

DESがより柔軟に利用できるようになりました。
旧商法下ではこのDESを実行するにあたって、原則として裁判所の選任する検査役の調査が必要とされていました(商法280ノ8)。そのため、その実行に時間とコストがかかってしまい、それがDESの実行を躊躇させる要因にもなっていました。会社法ではこの規制を緩和し、検査役の調査を省略できる場合が拡大されました。これによりDESを活用した資本政策が柔軟に行えるようになり、債権者側も事業再生を目的として積極的に活用することが可能になりました。

検査役の調査を省略できる場合とは?

検査役の調査を省略できる場合は次のとおりです。
1. 少数現物出資:割当株式総数が発行済株式総数の10分の1以下。
2. 少額現物出資:「価額」の総額が500万円以下。
3. 市場価格のある有価証券:出資有価証券の「価額」が市場価額以下。
4. 弁護士等の証明:「価額」が相当であることにつき、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人の証明(不動産の場合は不動産鑑定士の鑑定評価も)を受けた場合。
5. 会社に対する金銭債権:弁済期が到来しかつ「価額」が当該金銭債権に係る負債の帳簿価格を超えない場合。但し、弁済期が未到来であっても、債務者側(会社側)がその期限の利益を放棄することで充足されます。
※「価額」とはそれぞれの財産の価額として会社が定めた金額を言います(会社法199条1項3号)

DESのメリットは?

このようにDESを利用できる場面が広がり、DESを有効に活用することによって、下記のようなメリットが考えられます。
(1)決算書上、借入金が減少し資本金が増加するので「自己資本比率」があがり、対外的信用が上がり、銀行の与信審査も有利になると考えられます。
(2)有利子負債の減少にともない利息の支払が軽減されます。
 
ただし、平成18年度税制改正によりDESによって資本に振り替えられる債務については時価評価することになっています。
つまり、債務超過の会社の場合は時価はゼロとみなされ債務の全額が債務免除益のような益金課税される恐れがありますので注意が必要です。また株主構成が変化することにも配慮する必要がありますので、専門家のアドバイスのもと実施することが必要になります。

増資が必要な場合とは?

株式会社は原則として、設立の時に事業の元手となる資本金を集めますが、設立された会社が順調に業績を伸ばしたため、事業を拡大する必要性が出てきた場合や、より多角的な経営に乗り出そうとする場合には、それまで集めた資金や社内に貯えた利益では不十分なこともあります。こういった場合に、株式会社は新たに株式を発行するなどして資金調達を行ったりします。

募集株式の発行とは?

増資の方法はいろいろとありますが、もっとも一般的な方法は募集株式の発行(新株発行)です。募集株式の発行とは、株式会社が設立時ではなく成立した後で新しい株式を発行、もしくは自己株式を処分する(株式を新規に発行する代わりに、会社が持っている自社の株式を与える)ことです。
大まかな流れは以下のとおりです。
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株主割当と第三者割当の違いは?

募集株式の発行の方法には、株主割当と第三者割当があります。株主割当とは、一定の日における株主に対して、申込をすることにより、各株主の所有する株式の数に応じた割合で、募集株式の割当を受ける権利を与えるものとする発行方法です。株主に募集株式を割当てても、各株主の所有する株式割合に応じた発行でなければ、株主割当にはなりません。株主割当以外の発行方法が第三者割当となります。

必要な費用は?

募集株式の発行により資本金が増加すると登記が必要となります。登記の際には登録免許税という税金がかかりますが、その額は増加する資本金の額の7/1000の額となります。
弊事務所の報酬につきましては、ご依頼内容により算出いたしますので詳しくはお問い合わせ下さい。

新株予約権

役員に対する新株予約権の付与と報酬との関係

取締役の報酬等について会社法361条では、「報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益」を「報酬等」として定義し、定款に定めがなければ株主総会の決議によって定めることと規定しています。
「職務執行の対価」とは、取締役の地位に着目して付与される利益を広く含むため、取締役に対する新株予約権の付与の目的(報酬支払の代替手段としての付与、インセンティブ目的、福利厚生目的の付与)を問わず、会社法361条の承認が必要となることに注意が必要です。
報酬総額を決議するとともに(会社法361条1項1号、2号)、ストックオプション目的で付与する新株予約権は「報酬等のうち金銭でないもの(会社法361条1項3号)」にも該当しますので、具体的内容も決議することになります。
具体的内容といっても、361条はあくまで報酬の枠の決議を求める趣旨ですので、付与する新株予約権の個別具体的な内容、条件の全てを決議する必要はなく、報酬等の全体像を明らかにすれば足ります。当該新株予約権の行使により発行される株式数の上限、新株予約権の譲渡の可否、行使価額またはその算定方法、行使条件(行使は付与時から一定期間を経過した時から可能であり、最長何年であること等)、退職慰労金として付与される場合を除いて退職その他の事情により取締役の資格を失った場合には行使することができなくなること等の事項を決議すれば足りると考えられます。

会社法が施行されて新株予約権はどうなった?

新株予約権の発行手続きについては、新株の発行手続きと同様の整理がなされました。
また有償で新株予約権が発行されるときは、払込期日前であっても、無償で発行されるときと同様に
割当当時から新株予約権としての規制を受けるものとされました。
新株予約権の消却については、株式の消却と同様に、新株予約権の取得とその自己新株予約権の消却として整理するものとされました。
新株予約権が発行されている場合において,譲渡制限の定めを設ける定款の変更をする場合や発行会社が合併によって消滅する場合等には,一定の条件下で、新株予約権者に対し,新株予約権の買取請求権を付与することとし、新株予約者の利益を保護することとされました。
新株予約権は資本政策の重要な手段の一つです。決議から登記に至るまで、弊事務所でお手伝いをさせていただきます。

必要な費用は?

新株予約権を発行、行使、消却すると登記が必要になります。登記の際には登録免許税という税金がかかりますが、新株予約権の発行は9万円【税込】、行使の場合は増加する資本金の額の7/1000の額
(その額が3万円【税込】に満たなければ3万円【税込】)、消却による変更の場合は3万円【税込】となります。
弊事務所の報酬につきましては、ご依頼内容により算出いたしますので詳しくはお問い合わせ下さい。
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株券の廃止

株券を発行するつもりもないので、この際廃止したいのですがどうしたらいいですか?

平成18年5月1日施行の会社法では、株券不発行が原則とされました。しかし、会社法施行前から存在し、定款で株券不発行制度を採用していなかった会社は、株券を発行する旨の定款の定めがあるとみなされ、職権により株券発行会社である旨が登記されています。
しかし非公開会社(すべての株式について譲渡制限のある株式会社)では、株主から請求があるまで株券を発行しなくてよく、株券発行会社である旨が登記されているにも関わらず、株券を発行していない会社は多くあります。

このように実際に株券を発行していない会社での、株券を発行する旨の定款の定めの廃止の手続きは次のとおりです。
1. 株主総会の特別決議で定款変更をする。
2. 株券廃止の効力発生の2週間前に株主及び登録株式質権者に対し、株券を発行する旨の定款の定めを廃止すること等の通知をする。

また、実際に株券を発行している場合でも、株主に株券不所持の申出をしてもらい、上記と同じ手続きを取ることができます。

なお、株券を発行する旨の定款の定めを廃止した場合、登記が必要です。この登録免許税は、3万円です。
登記申請を司法書士に依頼する場合には別途報酬が必要になります。
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