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経営者のための成年後見制度利用のすすめ(ケーススタディ編) NETdeBIZ.com 2004/5/19 日本では今、高齢化社会の抱える問題がさまざまな局面で現れて来ています。特にこの数週間というもの年金制度の改革が連日マスコミを賑わせています。そうした社会制度の整備・充実が今後の日本社会を支えていくために欠かせないものであることは間違いのないところです。今回のテーマである成年後見制度も高齢化社会の進展の中で重要な機能を果たすべく、最近大きな改革が行われ、新に「任意後見」の制度が創設されました。 以下、成年後見制度がどのような機能を果たすものであり、経営者の皆様にとってどのような役に立つものであるのかを事例(事実をもとにしたフィクション)を交えながらお話させていただきたいと思います。 1. ケーススタディ 例えば任意後見制度による備えをしていないとこんな問題が生じてきます。 (1)Aさん82歳の場合 衣料関連の会社を経営してまいりましたが現在は長男(55歳)に会社の経営を任せ、第一線を退いております。しかしご多分に漏れずバブル崩壊後は会社の経営状態も順調とは言えず負債も少々膨らんで来ましたため、所有不動産を処分して負債の返済に充て経営の建て直しを図ることになりました。幸いロケーションも良く、好条件で買い手が見つかりました。 ところがいざ契約という段になって、買い手から異議が出ました。不動産はAさん名義であるにも拘わらず契約交渉にはAさん自身は一度も顔を出したことがなく、もっぱら長男が交渉に当って来ておりましたが、売却(および価格その他の条件)がAさんの意思に基づくものであるのかどうかの確認がしたいというのです。本人の意思(一定の判断能力の下で)に基づく契約でなければ当然契約自体無効ですが、本人の知らない間に、又は本人の判断能力の低下に乗じて家族が勝手に不動産を処分するという事態は容易に想像できる事であり、相手方がそのような心配をするのは当然の事です。 そこで、買い手企業の担当者がAさんと会うことになりました。会ってみるとAさんは挨拶もきちんとしますし、世間話も普通に受け答えしているように思えるのですが、肝心の不動産処分の話になると途端に返事が曖昧になり、明確に売却について理解し了承しているという印象が持てませんでした。事前にAさんに因果を含めていたらしい長男はあわてておりましたが、このような状態では売買契約が本人の(十分な判断能力の下での)意思に基づくものであるとはいえません。実はAさんはすでに痴呆(アルツハイマー)が進行していたのでした。結局契約は一時延期して善後策を協議するということになりました。 (2)Bさん62歳の場合 4年前脳梗塞で倒れ、現在は病院で寝たきり状態。仕事一筋で独身を貫いて来ましたので、妹さんが面倒を見ておりました。 長年の入院生活に多額の費用がかかり、蓄えも底をつき始めていましたため、Bさん名義のマンションを売却して入院費用・介護費用に当てようという話が持ち上がり、妹さんが不動産業者に依頼して買い手を見つけてもらいました。しかしこの場合もAさんの場合同様ご本人の意思の確認が出来ておりませんでしたため、不動産業者が確認することになりました。病院を訪ねようと思い、妹さんに電話し、趣旨を説明しましたところ、「そういうことでしたらお会いになられても無駄だと思います、意識はありますが会話は出来ませんから」ということでした。これではやはり契約どころの話ではありません。さらに遠方在住の弟が売却の話を聞きつけ、兄の意思に反して売却するのはけしからんと抗議してきたという話も耳に入ってきました。取引は暗礁に乗り上げてしまいました。 (NETdeBIZ.com 2004/5/19掲載) |
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